オーケストラ版「禿山の一夜」

スコア完成しました。出版する前に一度試演または初演をしたいと思っています。演奏してくださる団体大募集中です。

 ⇒出版しています。誰か演奏して~!

以下説明


「ソローチンツィの定期市」に基づく純オケ版「禿山の一夜」を作りました。

もう一度ここでこの曲について整理してみたい。

 

①1860頃ピアノ版として原曲が書かれたらしい。

 メグテン男爵の戯曲「妖婆」を題材とした歌劇のために書いたという。

②1864。歌劇「サランボー」にモチーフが使われる。

 昔、一柳富美子先生がFMで放送した音源を持ってます。

③1867に完成されたオーケストラ曲。(いわゆる原典版)

 ゴーゴリの戯曲「聖ヨハネ祭の夜の禿山」に基づくのでその名で呼ばれることが多い。但し初演は100年以上たった1968年。バラキレフに演奏を断られたというだけあって、スコアは演奏不可能に近い音符も多数。アバド・ベルリンフィルだからカッコ良く演奏できるのであって、作曲科の学生だったら先生に指導を受けるかも。

④1871年 歌劇「ムラーダ」合作計画で、使おうとしたらしい。結局「ムラーダ」はリムスキー=コルサコフが単独で作曲。

⑤1880年 歌劇「ソローチンツィの市」(未完成)実際の作曲期間は1874から1881(死ぬまで)らしい。死後いろいろな人が完成版を作ったが、現在は音楽学者のパーヴェル・ラムが校訂しソ連の作曲家ヴィッサリオン・シェバーリンがオーケストレーションしたスコア(1931)で上演される場合が多い。この版の第3幕第1場後半の「若い農夫グリーチコの夢」の場面が「禿山の一夜」にあたる。(但しト書きには「丘」とあるだけで「禿山」とも「聖ヨハネの夜」とも書いていない。)悪魔の饗宴を夢に見たことにして、やや無理やりこの場面をオペラに挿入した感じはある。

⑥1886年 リムスキー=コルサコフ版。解説などを見ると⑤に一部補筆しオーケストレーションした作品のように書いているが、見比べるとかなり違う。構成もソナタ的に整えているし、ハーモニーもそれなりに変えている。ムソルグスキーの素材を基にした作曲ともいえるかも。オーケストレーションのうまさはさすが。➂や④に比べて、整っているぶん、つまらなく感じる人もいるだろう。

 ある意味ムソルグスキーの毒が薄まってしまったといえなくもないが、薄まった毒でこのインパクトはさすがムソルグスキーという見方もできる。

というわけで

⑤を基にオーケストラ版を作ってみた。

というのは初演のタイミングの関係でシェバーリンもリムスキー=コルサコフも③は聴いていないはず。なので、最終バージョンとも言えるソローチンツィ版のスケッチを原典版を参考にしながらオーケストレーションすれば究極の「禿山の一夜」になるはず。という目論見です。

 ただ問題がある。ラム/シェバーリンのヴォーカルスコアをもとに今回の作業をしたわけだが、どこまでがムソルグスキーでどの程度ラムやシェバーリンの手が入っているのか、分からない。それこそ一柳先生に聞けばわかるのかもしれないが....

 

 とにかく今回は MUSIKVERLAG HANS SIKORSKI社ののヴォーカルスコアを信じてやってみた。明らかなミスプリ以外は不思議なハーモニーやワンパターンでないフレーズもたぶんムソルグスキーの意志であろうと考え、そのままにしました。

 

 ⇒その後の調べではオリジナルの連弾ヴォーカルスコアはかなり完成された形で残っている。連弾でのCDもあります。それを聴いた感じではMUSIKVERLAG HANS SIKORSKI社のスコアを信じて良いと思います。

 でもやはりオリジナルの連弾スケッチを見てみたい!