ベートーヴェン第5交響曲 楽譜上の素朴な疑問(コントラバス編)

 ベートーヴェンの第5交響曲、最近ではベーレンライター版、ブライトコップ新版などいろいろ校訂新版が出ていますが、楽譜を見ていると、本当にここはこの音符で良いのだろうか?ただの勘違いやベートーヴェンの校訂ミスではないだろうかと思われる場所が何か所もある。今回はその中でもコントラバスパートに関する素朴な疑問を皆さんと考えたい。

とりあえず思いついたのは全て第4楽章なのだが、最初はこれ、第18小節(第3楽章からの通し番号になっている楽譜では389小節目)

 一拍目のウラ、ほかの動きは全て(ティンパニも含め!)16分なのに、チェロ・バス・コントラファゴットだけ8分の動きになっている。
 私も何回もこの曲はコンバスで弾いたが「ベートーヴェンの書いた楽譜だから」と深く考えることもなく楽譜通りにずっと弾いていた。

 ところで次の動画を見てみるとコントラバスの手の動きから見るに意識して16分音符で弾いているように思われる。(25分過ぎたところくらい)何だかスッキリしてカッコよいではないか!


 それを意識してYouTubeで色々な演奏を見て(聴いて)見ると低弦はもともとパルシブに立ち上がりのはっきりした楽器ではないため、8分で弾いていてもそれがどういう効果というよりはティンパニの陰に隠れてしまい、「よくわからない」音になってしまっているように聴こえる。

 バロックなどでは8分で書いてあっても周囲の状況によってははねて(16分で)演奏するというのは良くある話だし、モーツァルトにもそういう場面がたまにあるけど、皆さんはどう思われますか。

 次は第32小節目。(通しでは405小節目)

 上の楽譜でいうと3小節目です。

 これだけ見ると、チェロとコントラバスの音符を変えているのは「当時の楽器では出ない音なのでベートーヴェンがオクターブ上げたのかな?」とも思えるが、再現部では

 という風に変えているので???なのです。

 それにこの曲では、下のC音まで割と出てくるので益々わからない。
この提示部と再現部の違いを意味があることのように解説している文も見たことはあるが、私にはその時使っていた五線紙の都合だったりその時の気分だったりして意味のある違いではないようにも思える。もちろん和声的次の進行も異なるのでわざと変えている理由も考えられないことはないのだが、どうでしょう、
いかがでしょうか。
 
 次は85小節目(通しでは458小節目)

 要するに1カッコと2カッコです。
素直に考えると2カッコもレファシレソレシソと動いた方がよほど自然だし、特にそこで急にシレソシにする理由もないと思えるので、ここはベートーヴェン先生のうっかりミスではないかと思うのですがいかがでしょうか。
 ちなみにコントラバスの古典的な教則本であるシマンドルの第1巻の巻末の譜例集ではレファシレに直した形で出ています。